ロンドンティールームから、新作ブレンド紅茶『カウンテスロンドンティー』が発売します。
インドネシア産の、ミルクティー向きブレンドです。
ところで、インドネシア産?となった方もいるのではないでしょうか。実は、インドネシアは世界第4位の紅茶生産国でもあるんです。
紅茶葉好きでも、隠れた紅茶大国・インドネシアを知らなかった!という方は、結構いるのではないでしょうか。
それほど生産量が多い紅茶なのに、なぜ知名度が低いのか?
今回は、新作ブレンドの紹介をしながら、
インドネシアの紅茶事情に迫っていきたいと思います。
『カウンテスロンドン』の特徴
新作紅茶『カウンテスロンドン』は、あっさりとした口当たりのミルクティー向け紅茶です。水色はやや暗めの黄橙色で、どこかオリエンタル、東南アジア特有の香りを感じられます。
ミルクティー向きの茶葉だけあって、ミルクとの相性も良好。独特な後味の丸さと、ミルクのまろやかさが引き立てあい、スルスルと飲めるほど軽い口当たりのミルクティーとなります。
渋みが少ないので、ストレートで楽しむのも一興でしょう。
名前の由来は「伯爵夫人」から
カウンテス(countess)とは、イギリスでいう伯爵夫人、またはその爵位を指します。男性は「Earl(アールグレイはグレイ伯爵、の意味)」なので、ちょっと妙に感じますね
その理由は、爵位の成り立ちにあります。イギリスの爵位はフランスを元に作られ、伯爵の呼び名だけ「count」から「Earl」に改められたのですが……。夫人の方は改められず、「countess」のまま残ってしまったのです。
当時の女性に対して、いかに扱いが悪かったかが察せる……のかもしれません。
インドネシアと紅茶
インドネシアの人口は約2.7億人、うち90%がイスラム教徒です。
イスラム今日は戒律で飲酒を禁じているため、相対的にお茶やコーヒーなどの喫茶文化が広まっています。
インドネシアと聞いて、コーヒーを思い浮かべた方もいるのではないでしょうか?
マンデリンに代表されるインドネシアコーヒーは世界でも人気なので、
紅茶の名産地という面は、ともすれば埋もれてしまいがちです。
しかしながら、お茶全般の生産量は世界8位、紅茶だけなら4位と、茶葉の一大生産地でもあります。
インドネシア紅茶の特徴
インドネシア紅茶の90%は、ジャワ島とスマトラ島で作られます。それぞれ「ジャワティー」「スマトラティー」という名前です。茶畑があるのは高度600m以下の低地であり、分類としてはローグロウンティーに属します。
インドネシア紅茶の味はセイロンティーに似ているといわれており、若くさわやかな香り(トップノート)が特徴です。コクはあまりなく、あっさりとした口当たりの紅茶になります。
インドネシアの紅茶文化
▲「ポチ茶」に使うティーポット。釉薬を使わない素焼き
イギリスのアフタヌーンティー、日本の茶の湯などと同じように、インドネシアにも独自の紅茶文化があります。今回は、「ポチ茶」とよばれる飲み方をご紹介。
ポチ茶って何?
素焼きのポットで淹れたジャスミンティーをカップに入れ、氷砂糖で甘みをつける飲み方です。なんだか可愛めな響きですが、「ポチ」とはポットのことなので、インドネシア流ポットティーの淹れ方を指すようです。
飲む際は、カップをゆすったり、スプーンで混ぜたりしてはいけないんだとか。紅茶を飲んでいるうちに、だんだんと氷砂糖が溶けだし、自然に甘くなるのを待ちます。
この飲み方は、『つらいこと(苦さ)もある人生だが、辛抱強く耐えれば幸せ(甘さ)を得られる』という教訓を得るためのものです。日々お茶の時間を楽しむ中で、明日を生きるためのメッセージを受け取っているんでしょうか。
実際に試してみた
というわけで、我々も「ポチ茶」を試してみることに。
氷砂糖を入れたコップに、ジャスミン茶を注ぎます……。
……(味見中)
単体でおいしいジャスミン茶に、わざわざ氷砂糖をこれでもかと入れる意味、なかったですね(遠い目)
調べてみると、インドネシアやインドのような暑い国では、非常に甘いお茶が好まれるそうで……。日本在住のスタッフでは、「そのまま飲んだ方がおいしい」という結論になりましたとさ。
インドネシア紅茶を見かけないワケ
そんなインドネシア紅茶を日本で見かけないのは、いったいなぜなのでしょうか?
理由は大きく2つあります。
1.輸入量が少ない
日本に入ってくるインドネシア茶葉は、全体の約15%。スリランカやケニア、インドに比べると少なく、見かける機会も少なくなるでしょう。
※参照:https://www.tea-a.gr.jp/knowledge/tea_data/exl/dr2.pdf?20240731
また、インドネシア紅茶はクセが無く飲みやすいため、ブレンドに使用されることが多いです。逆に言えば、インドネシア紅茶単体で飲む機会が減ってしまいます。
以上の理由から、日本で純粋なインドネシア紅茶をいただくのは、少し難しいのです。
2.生産量が減っている
インドネシア紅茶の生産量は年々減少しています。
実は第2次世界大戦前まで、インドネシアは世界第3位の紅茶生産国でした。
戦前、インドネシアはオランダの植民地であり、オランダの方針に従って茶の生産をしていたためです。
しかし、大戦中の1942年、日本がインドネシアを支配したことをきっかけに、茶産業は衰退。1950年の独立以降、徐々に生産量が回復したものの、現在ふたたび減少傾向にあります。
というのも、茶畑よりも収益性がよいアブラヤシ(パーム油の原料)や野菜畑に作り替えられているのが原因です。国としても収益性を優先し、茶産業の保護を行っていないため、収穫量・茶畑の面積ともに減少しています。
ちょっと珍しいインドネシア紅茶『カウンテスロンドン』をお試しください
ロンドンティールームの新ブレンド「カウンテスロンドン」はインドネシア紅茶を中心にした、ミルクティー向きのブレンド紅茶です。
インドネシア紅茶は輸入量が少なく、日本ではちょっと珍しい紅茶。収穫量も減っているので、もしかすると今しか飲めないかも……。というわけで、今のうちにお試しくださいませ。