Tea Story 読めばきっと好きになる紅茶のお話

2025.05.15

新鮮な茶葉はロイヤルミルクティーに向かない!? 熟成茶葉を使うワケ

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紅茶を淹れるときは、「新鮮な茶葉」の方がいい、という話があります。茶葉は農作物であるため、野菜や果物などと同じく、鮮度が命。新鮮な茶葉を使った方がおいしい、と考えるのは、自然なことでしょう。

当店としても、紅茶のおいしさを知ってもらうためには、新鮮な茶葉を使うのがよいと考えています。
しかし、当店の売りである煮込み式ロイヤルミルクティーだけは、まったく逆の考えが必要でした。

今回は、ロイヤルミルクティーの「エグ味・雑味」を解決した、茶葉の熟成についてのお話です。

ロイヤルミルクティーには「熟成」した茶葉が最適

ロイヤルミルクティーにおすすめの茶葉は何か、とお悩みの方は、少なからずいることでしょう。そんな疑問に対して、ロンドンティールームの出した答えが「茶葉をブレンドし、後熟させる製法」です。

ロイヤルミルクティーの開発当初は、新鮮な茶葉を使った方が紅茶も美味しくなる、と考えていました。しかし、できた茶葉はなぜか刺々しい味に。茶葉の甘みやうまみが感じられるようにブレンドしたのに、どうしても味がまとまりません。

新鮮な茶葉より熟成した茶葉を

開発に行き詰まったマスターは、一度発想を逆転してみます。茶葉を寝かせると味が丸くなる、という話にヒントを得て、あえてブレンド後に一定の熟成期間を取るようにしたのです。

とはいうものの、熟成を行うには、環境から見直す必要がありました。
適切な温度・湿度下で管理しないと、茶葉はあっという間に劣化します。そのため、倉庫に依頼し、熟成に適切な環境を作ってもらったのです。

さらに、依頼する関係上、少量ずつ熟成するわけにもいきません。一度に約2,000kgの茶葉をブレンド・熟成するため、細かな打合せも必要でした。「適切な熟成期間の設定」「ブレンドをする日程決め」、「貯蔵してもらう倉庫との契約」、その他もろもろ……。熟成の環境を整えるのに、相当量の課題を解決することになったのです。

「専用」茶葉にこだわるワケ

こうして完成したのが、ロンドンティールームのロイヤルミルクティー専用茶葉でした。特別に依頼して、低温・低湿環境で2年以上の熟成期間を設けることで、紅茶の甘みをより深く、エグ味・雑味は感じにくくしています。

ロイヤルミルクティー「専用」茶葉と銘打っているのは、ロンドンティールーム独自の考えによるものです。煮込んで作るロイヤルミルクティーの抽出条件が、ティーポットと大きく異なる点に着目し、高温かつ長時間の煮込みでも甘み・旨味が際立つようブレンドを行いました。熟成によって風味がより優しくなっているため、砂糖なしでも美味しく飲める仕上がりです。

▼当店のロイヤルミルクティー専用茶葉はコチラ

ロイヤルミルクティー RM-023 煮込み式専用 紅茶葉(リーフティー)

「発酵」と「熟成」のちがい

さて、ここからは「発酵」についても言及します。熟成と発酵は、何が違うのでしょうか?

紅茶は、茶畑から採れた茶葉を「半発酵」状態に加工したものです。最初は緑色の茶葉が、発酵の過程で茶色に変化していきます。

しかしながら、世にいう発酵と、茶葉の発酵は科学的に異なる現象です。茶葉の発酵では、茶葉内のポリフェノールが酵素によって変化します。このような変化は、科学的にいうと「酸化」にあたるのです。

そして熟成とは、茶葉の加工(つまり酸化)が完全に終わった後、長時間をかけて香りや味わいが落ち着いていく変化のことです。

熟成された紅茶は「丸みのある」味に

ブレンド直後の茶葉は、少々エッジの効いた味をしています。ブレンド直後の紅茶は、少し渋みが強すぎるのです。

しかし、そんな茶葉を長期間寝かせ、熟成させると、渋みや苦み、雑味が落ち着いてきます。また、味はより甘くなり、香りはフローラルで芳醇に変化するのです。世にいう、高級な味に近づくともいえるでしょうか。

 

昔からある熟成茶

ロイヤルミルクティーに熟成茶葉を使うアイデアは、古くからある考え方から発想したものです。熟成によって茶葉の味がマイルドになることは、はるか昔から知られていました。

実際、現代でも熟成して作るお茶は残っています。一例として、中国の「プーアル茶」と、日本の「熟成茶」を取り上げてみました。

中国のプーアル茶

プーアル茶は、中国の雲南省で生まれたお茶です。その起源は7世紀までさかのぼる、非常に歴史の深い熟成茶でもあります。

製法は、殺菌処理した茶葉を圧縮してフリスビー状に固めるという、なんとも変わったものです。固めて保管するうちに、プーアル茶は緑茶のような風味から、より甘く奥行きのある味・香りに変わります。

こうして作られるプーアル茶の価値は、保管年数によって決まります。中には、数十年間保管されて言う「ビンテージ・ティー」もあるんだとか。とくに、1970年代以前のプーアル茶葉には、芸術品としての価値すらあるといいます。

日本の熟成茶

熟成茶(蔵出し茶、秋新茶)とは、春に取れた新茶を熟成させ、秋口に販売するというものです。はじまりは江戸時代、お茶好きだった江戸幕府初代将軍・徳川家康の献上品として作られたといいます。

茶葉の熟成には、低温で乾燥した気候が必要でした。もちろん江戸時代に冷蔵庫なんてないので、春先から秋までの約3か月間は、冷涼な山岳地帯で保管されたといいます。このとき、保管に用いられたのがいわゆる茶壷です。

ちなみに、現在でも熟成茶の製造は続けられています。お茶どころの静岡県では、採れた茶葉の一部を加工したのち、富士山まで運ぶのだとか……。お茶のために登山をするとは、さすがに驚きです。

熟成茶葉のロイヤルミルクティー

紅茶は時間とともに姿を変える、奥深い飲み物です。熟成によって角が取れ、香りと旨味が調和する紅茶の世界は、まさに“時の魔法”を感じさせてくれます。

当店のロイヤルミルクティー専用茶葉は、そんな熟成を終えた後の、旨味がたっぷり詰まった茶葉です。熟成された茶葉の旨味を、ぜひ体験してみてください。

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