Tea Story 読めばきっと好きになる紅茶のお話

2026.04.03

『ロイヤルミルクティー』の味を次世代へ

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皆様、いつもご愛顧ありがとうございます。
ロンドンティールームのマスター、金川宏です。

私の半生をかけ試行錯誤を重ねて作り上げてきたロイヤルミルクティーは、ありがたいことに「また飲みたい」と多くのお客様に思っていただける一杯になりました。

けれども私も80を越え、今改めて強く思うようになったことがあります。

この味を、私の代で終わらせたくない。
まだ体と頭が動くうちに、この技術と考え方を次につなぎたい。

そこで今回、少し特別な募集を出すことにしました。
ロイヤルミルクティーの技術と、その根底にある考え方を受け継いでくださる方を募集します。

技術を受け継ぐ、その前に

今回の募集は、人手を増やすことや、
私の作業を手伝う人だけを求めるものではありません。

ロイヤルミルクティーを本気で学びたい方、
将来、自分の店を持ちたい方、
看板になる一杯を、自分の手で育てられるようになりたい方。
そんな方に向けた募集です。

ただし、最初から技術だけを学べるわけではありません。
ここからお伝えするのは、レシピを覚えるだけでは届かない世界の話です。

レシピの先にある、伝えたいもの

「技術を継承する」というのは、「レシピを渡す」こととは全く違います。

そのため最初から「作り方だけを教える」「鍋の前に立って作るだけ」といったことはまずありません。
最初は、ホールやお店全体の仕事など、他のスタッフと同様の業務にあたっていただきます。

技術を教えることを惜しんでいるわけではありません。
ロイヤルミルクティーは、ロンドンティールームの顔ともいえる一杯だからです。

ロイヤルミルクティーは、素材も作り方もいたってシンプルです。
しかし、「レシピを覚える」だけではお客さんを感動させられる、記憶に残る一杯にはならない。
「ロイヤルミルクティーを作ることができる技術」とは、レシピや技量だけでは届かない部分を理解することです。

だからこそ、まずはロンドンティールームの現場に深く入ってもらいたいのです。
ホールで、お客様と接することの大切さ。
キッチンで、迅速かつ滞りなく仕事をするための目線。
全体を見て、今何をするべきなのかを自分で考えること。
それがやがて、ロイヤルミルクティーの本質に触れる機会になります。

なぜブレンドをするのか。
なぜブレンドはこの比率なのか。
なぜこの茶葉を原茶に選ぶのか。
なぜこの牛乳なのか。
なぜこの湯量なのか。
なぜこの煮込み時間なのか。

そうした一つひとつの理由は、現場で積み重ねた経験と試行錯誤の中でしか身につかないものです。
だからこそ、まずはあなたにも「店のすべて」を知ってもらいたいと考えています。

記憶に残る味は、下積みの日々に宿る

ロンドンティールームを知ることが、なぜロイヤルミルクティーの本質に触れる機会となるのか。
一見まったく関係のない仕事に見えることでしょう。

下積みから始めることは、現代ではあまり好まれないかもしれません。
承知の上です。
しかし実は、一杯の味には調理以外のすべての仕事がつながっています。
細かいところまできちんと気にできる人は、味の細部にも気づけます。
反対に、足元の仕事を疎かにすると、その小さな妥協が、やがて一杯の仕上がりに「粗さ」となって現れます。

「お客様にお金をいただいて一杯をお出しする」
あらゆる人が意識すべきことであり、そして非常に重いものです。

経験は、あなたを裏切りません。
より効率的に動くのはもちろん必要なことですが、飲食の世界は最後には経験に裏打ちされた感覚がものをいう場面があります。
決して遠回りではなく、「下積み」で得た経験と気づきは、味の精度につながり、将来自分の店の武器になり、店が選ばれる理由になります。

たかが下積み、されど仕事。
私が40年かけて、身をもって体験していることです。

誰もいない厨房で一杯を磨く

私の仕事は5時から始まります。
まだ外が暗い時間に、厨房の灯りをつける。助手はいない。
誰もいない静かな空間で、その日お客様にお出しするロイヤルミルクティーと向き合う。
なぜそんなに早くから、一人でやるのか。
それは、私にとってロイヤルミルクティーの仕込みが、ただの作業ではないからです。

人がいると気が散るだけではありません。
つい頼ってしまって、自分で考えることをやめてしまう。
そうした甘えが、一番味わいを左右してしまうと実感しているからです。

ロイヤルミルクティーは、見た目ほど単純な飲み物ではありません。
茶葉が違えば旨味が変わる。
ブレンド比率が違えば深みが変わる。
牛乳が違えば厚みも変わる。
煮込み時間が少し違うだけでも、仕上がりは別物になります。
考えなしに鍋をいじっても意味がない。
いつも通り作るだけではだめで、その日の気温、湿度、素材の状態に合わせて判断する。

その工夫を考えるのは難しく、厳しいことでもあります。
けれど、うまくいったときの楽しさったらない。
そのうえでお客様に「おいしい」と言ってもらえる喜びは何にも代えがたいものです。
良い素材を使えば、それだけで良い味に仕上がるわけではありません。
工程ひとつひとつに意味があり、何をどう組み合わせ、どう引き出すか。
そこを毎日考え、試し、直し続けてきたからこそ、ようやく今の一杯があります。

私にとって開店前のこの時間は、一杯を極めるための「ロイヤルミルクティーの研究室」なのです。

364日、進化を支える積み重ね

ここまで、応募してくださる方に求めることを様々書いてきました。
しかし、求めている以上、私自身が今でも続けていることについて触れさせてください。

ロンドンティールームを開店した40年前から今に至るまで、現役で毎日手を動かしています。
毎朝自分自身が率先して動き、頭を駆使してやり続けることが、新しいアイデアを生むと信じているからです。

年齢を重ねても、ロイヤルミルクティーに関する知的好奇心が沸き続ける。
日々学び続け、新しいことに挑戦していく。
毎日の作業、つまり下積みが、ロイヤルミルクティーの向上・進化に繋がっていると考えています。

毎日やることが違うからこそ、工夫の余地が生まれる。
すると、あんなことをやってみよう、こんなことはできないか、という発想が生まれてくるのです。
一度思いついてしまったからには、やらずにはいられない。じゃあまた明日の朝、試してみよう……。
ロイヤルソフトクリームやロイヤルアイスクリームのレシピは、こうした日々の積み重ねから生まれたものです。

また、自分が率先して現場に立つことは、店の空気を保つことにもつながると思っています。
毎朝顔を合わせる取引先の方々にとっても、店主が現場に立っていることには意味があるのだと実感する毎日です。

最初から、364日休まずやるのは大変なので、少しずつでかまいません。

大切なのは、雑用と基礎を疎かにせずに毎日きちんと積み重ねていくこと。毎日の積み重ねがアップデートや新たなアイデアにつながります。
ロイヤルミルクティーそのものを進化させ続ける秘訣があるとすれば、それは「下積み」だと考えています。

おかげさまで、こうした挑戦はロイヤルミルクティーの特許や、ソフトクリーム・アイスクリームの開発にもつながっています。

「生涯現役」
これが、ロイヤルミルクティーを生み育てた私のモットーであり、生きがいです。

コピーでも真似でもない、自分だけの一杯へ

ここで誤解してほしくないのは、私は自分の完全なコピーをつくりたいわけではありません。
むしろ、人の物真似だけでは、選ばれる店にはなれないと思っています。
私は、技術の継承とは単なる作り方ではなく、考え方を受け継ぐことだと思っています。

シンプルな構成だからこそ、少しの違いや妥協が命取りになる。
ただレシピをなぞって鍋の前に立つだけでは、「ロイヤルミルクティーを作れる」とは言えません。
この味わいに至るまでの考え方そのものを理解して吸収し、自分のものにする。
そうして初めて、自分の技術として言えるのだと思います。

最初は真似から始めても構いません。
ただし、それはあくまで足がかりです。
そこで止まらず、自分で考え、実行し、反省し、高めていく。
その力を身につけてこそ、真の「継承」だと思います。

紅茶やミルクの知識を持ち、考えながら調整していく。
それを繰り返していくうちに、少しずつ体が覚えていく。
基礎・土台を築いてこそ、応用が利く。
目に見えるものではありませんが、死ぬまで使えるものだと思います。

本気で受け取ってくれる人へ

経験の有無は問いません。
けれど、どなたでもよいというわけではありません。
私の40年を凝縮してお渡しするからには、それを本気で受け止めてくださる方に託したいと思っています。

私たちが出会いたいのは、
・ロイヤルミルクティーを本気で学びたい方
・将来、自分の店を持ちたい方
・看板メニューになる一杯を、自分の手でつくれるようになりたい方
・近道や裏技ではなく、基礎からしっかり身につけたい方
・レシピだけでなく、考え方ごと学びたい方
です。

私が伝えたいのは、完成した答えそのものではありません。
答えにたどり着くまでに必要な、考え方と積み重ね方です。
ここで身につけていただきたいのは、ロイヤルミルクティーの作り方だけではなく、将来どこへ行っても通用する“自分の味を育てる力”です。
決して平坦な道ではありません。
簡単に身につく仕事でもありません。

けれど、本物の技術は「基礎」を鍛えた中に宿ります。
ここで土台を築いた経験は、将来必ず自分の力になります。
入っていただいたからには、私もしっかり向き合い、何年もかけて教えたいと考えています。
本気で来てくださる方には、こちらも本気で応えます。
だから、ロイヤルミルクティーを教えるときには基本的にマンツーマンです。

この味を、次の時代へ残したい

今まで培ってきた技術を、きちんと残したい。
それが、今の私の率直な思いです。
ロンドンティールームという店の中だけに留まらず、
この味や考え方が、次の人の手でまた新しい形になって残っていけば、これほど嬉しいことはありません。

少し変わった募集に見えるかもしれません。
けれど、これが今の私の本音です。

時間は限られています。
だからこそ、まだ伝えられるうちに伝えたい。
私が何十年もかけて守ってきた「考え続ける姿勢」と「基礎を疎かにしない情熱」を、同じ温度感で受け継いでくれる人を探しています。

あなたの夢である紅茶のお店に、
ロイヤルミルクティーという確かな土台が加われば、それはきっと大きな武器になるはずです。
この味を継ぎ、その先にある自分だけの一杯を育てていきたい方に、ぜひ来ていただきたい。
そんな未来を本気で描ける方と、お会いできれば嬉しく思います。

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