Tea Story 読めばきっと好きになる紅茶のお話

2025.04.17

「ロイヤルミルクティーソフトクリーム」に関する特許を取得しました。

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このたびロンドンティールームは、『紅茶茶葉抽出液、及びその製造方法』に関する特許を取得しました。

【特許番号】 特許第7656381号
【登録日】 令和7年3月26日
【出願日】 令和6年8月29日
【発明の名称】紅茶茶葉抽出液、及びその製造方法
【特許権者】 株式会社ロンドンティールーム
【発明者】 金川 宏(※審査官:松井 一泰
【出願番号】 特願2024-147945

特許情報はこちら

こちらは堂島本店で提供している「ロイヤルミルクティーソフトクリーム」に使用するロイヤルミルクティー抽出液と、そのレシピに関する特許です。

今回は、こちらの特許取得に至った背景や、完成品についての特徴をご紹介します。

ソフトクリームができるまで

お話は2023年の暮れ頃。当時、ロイヤルミルクティーの発祥店として、新しい派生商品の企画を考えていた時のことです。ロイヤルミルクティーの濃厚さを活かして、冷たいスイーツを作ってみよう、という話が持ち上がりました。これが後々、ソフトクリーム開発につながることになります。

早速、試作を始めたのですが……。ロイヤルミルクティーをソフトクリームミックスに混ぜただけの試作第1号は、美味しくないものでした。紅茶の味が薄く、ソフトクリームもバニラ感が強いため、ロイヤルミルクティーとしてバランスが取れていなかったのです。

ソフトクリーム開発の課題

ソフトクリーム開発にあたり、浮かび上がった課題は2つ。味のバランスと、調理温度の問題です。

まず、ソフトクリームと紅茶をそのまま混ぜたのでは、味にまとまりが出ません。通常のロイヤルミルクティーであれば、紅茶と牛乳を同時に炊き込むことで、双方のコクと旨味が溶けあいします。

しかし、抽出液とソフトクリームミックスの2つを混ぜるとなると、難易度が跳ね上がるのです。ソフトクリームミックスの味に合わせて抽出液の味を変えることになるので、バランス調整は困難を極めました。冷えると苦みや渋みを感じやすくなることもあり、まとまりのある味にならなかったのです。

さらに、温度が違いすぎるのも厄介でした。ロイヤルミルクティーソフトクリームに使用する紅茶は、ソフトクリームミックスの濃厚さに負けないよう、抽出時間を長くしています。

ここまではよかったのですが、問題は温度。長時間抽出と温度の低下により、紅茶のエグ味や雑味が強く出てしまったのです。ロイヤルミルクティーの濃厚さがまったく感じられず、満足いく仕上がりにはなりませんでした。

既存のロイヤルミルクティーレシピでは、スイーツに対応できない。そう感じたマスターは、ソフトクリーム用の紅茶抽出液の開発に乗り出します。

ロイヤルミルクティーの味わいの追求

ソフトクリームを作るにあたって、こだわりたかったポイントは「ロイヤルミルクティーの味」を残すことです。当店のロイヤルミルクティーの良さを活かしながら、スイーツとして完成させるためには、余分なものを入れるわけにはいかない。茶葉を煮込んだ抽出液と、ソフトクリームミックスだけで作る必要があります。

まず、ソフトクリームはバニラ感よりも、ミルク感のあるものを選びました。ロイヤル「ミルク」ティーですから、ミルクの味が濃くないとそれらしくなりません。加えて、ミルクらしく後味がすっきりとしているものを選ぶことも大切です。

濃い味わいのミックスを使うので、紅茶の風味も、ミルクに負けないくらい濃くする必要が出てきます。しかし、単純に煮込み時間を長くするだけでは、エグ味や雑味が出て美味しくなりませんでした。

当店のロイヤルミルクティーの味だと思ってもらえなければ、開発の意味がない。これまで培ったブレンドや調理法の技術だけで、味を整えなければならない状況でした。

ソフトクリームミックスと馴染む濃さに加えて、後引くおいしさを持ったロイヤルミルクティー抽出液……。この課題を解決するには、まったく新しい方法が必要でした。

特許申請へ

苦心の結果、マスターはこの課題を同時に解決する方法を編み出します。

こうして完成したロイヤルミルクティーソフトクリームのレシピ(正確には抽出液とその製法)は、特許認定を受けることになりました。ロイヤルミルクティーのレシピと同じく、再現性の高い形で残していきたい、と考えた故の取得です。

今回開発したレシピは、あくまでソフトクリームと合わせることを前提に作っています。しかし、当店には思いつかないような活用法を、誰かが発明してくれるかもしれない。その可能性を考えて、特許を公開することに決めました。

特許認定までの道のり

とは言ったものの、認定までの道のりは険しいものでした。

もっとも大きな障害は、自分たちがすでに『ロイヤルミルクティーの製造方法』に関する特許を取得していること。図らずも、先に出願した特許の応用とみなされたため、関連分野に関する特許認定のハードルが上がってしまったのです。

二度目の申請に向けて

最初の申請は、特許内容の重複を理由に拒絶されました。この時点では、作成したソフトクリームのレシピをそのまま特許文書化したため、ロイヤルミルクティー製造方法の特許と「紅茶抽出液に乳製品を入れる」という内容が重複していたのです。

一度目の申請が却下されてからというものの、各方面と調整を行い、果ては審査官との面接をすることに。全体の1%未満しか経験しないといわれる面接審査までもつれ込むほど、今回の特許は手ごわいものでした。もっとも、その障害になっているのは過去の自分たちなのですが。

『ロイヤルミルクティーの製造方法』特許との違い

結果的に言えば、2度目の申請で特許の取得には成功しました。請求範囲をより幅広く、『製菓用紅茶抽出液の製造方法』に変更したためです。

今回取得した特許の名称は『紅茶茶葉抽出液、及びその製造方法』。つまり、氷菓や製菓に適した紅茶抽出液の特許になります。

以前に取得した『ロイヤルミルクティーの製造方法』に関する特許では、お湯で煮込んだ茶葉にミルクを加え、ロイヤルミルクティーとして完成させるところまでを範囲としていました。

一方、今回の『抽出液と製造方法』の請求範囲は、紅茶の抽出液とそのレシピまでです。ソフトクリームのレシピというよりも、冷たい乳製品と混ぜて使える紅茶抽出液に関する特許になっています。

認定ポイントは「茶葉の後熟」

そんな特許が認められたポイントは、茶葉の後熟(エイジング)です。ブレンドした直後の茶葉は、味が完全に馴染んでいないためか、やや尖った味になります。ブレンドしてから2年ほど、温度・湿度を適切に保った倉庫で保管することにより、紅茶の味がマイルドになるのです。

茶葉の後熟による味の変化は、これまで数値化されてきませんでした。しかし、今回の特許取得に際してスタッフによる実験を行ったところ、放置することでいわゆる「紅茶味」が濃く出るとわかったのです。

今回のロイヤルミルクティーソフトクリームでは、茶葉を通常より長く煮込みます。煮込み想定でブレンドしている茶葉といえど、長時間煮込んでうま味だけを取り出すのは、至難の業でした。

しかし、特殊な環境で熟成された茶葉を使ったところ、長時間煮込んでもあまり雑味が出なかったのです。倉庫業者に依頼し、定温保管できる環境を作ってもらうことで、ようやく出せた味でした。

特許を取得したソフトクリーム、お試しくださいませ

今回は、当店のロイヤルミルクティーソフトクリームに関する特許取得のご報告でした。
今後はソフトクリームに限らず、アイスクリームやかき氷などの開発にも着手する予定です。

発祥店のロイヤルミルクティーの味はそのまま、濃厚で冷たく仕上げたソフトクリーム。冬でも食べたくなるこの味を、ぜひお試しくださいませ。

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