ぽってりとしたデザインが「カワイイ」と大人気だった、ロンドンティールームオリジナル『1人用ステンレスティーポット』。
諸般の事情から製造ができなくなり、販売中止となっておりましたが……。
その間も、お客様から多くのリクエストをいただいたことから、
再度の改良・製造に踏み切りました。
今回のモデルは、金型から見直した新しい造形に。
「茶こしが入るようにしてほしい」とご要望をいただいたことから、
茶こしが入るよう再設計しています。
今回は、生まれ変わった1人用ステンレスティーポットを詳しく見ていきましょう。
『レトロかわいい』見た目とデザイン
人気のワケは、この見た目。SNSで投稿した際にも、多くの方から反応をいただきました。
丸っこく、ころりと転がってしまいそうな見た目。女性が持っても、両手にすっぽり収まってしまうような大きさ。手のひらサイズで丸みがあるので、ちょっと小動物みを感じられます。
それでいて、デザインはアンティーク茶器を思わせる、絶妙な曲線美が出ています。注ぎ口から取っ手までがほぼ曲線の、おしゃれで上品な造形です。ぱっと見カワイイのに、よくよく見ればアーティスティックなたたずまい……。ギャップですね。
容量はティーカップ2杯分なので、おひとりでのお茶にぴったり。今あるポットではちょっと大きい……そんな時こそ、1人用ポットの出番です。
製作のきっかけは「蚤の市」
1人用ステンレスティーポットを制作するきっかけになったのは、今から数十年前のこと。
マスターがロンドンに滞在し、アンティーク商品の集まる市場(蚤の市)を訪れていたときでした。
寒い早朝の時間にもかかわらず、活気あふれる蚤の市。
そんな中でマスターが探していたのは、アンティークのティーポットでした。
シルバーのティーポットがあれば、買って帰ろう。そう考えていたところ、小ぶりな金属製のティーポットが目に入ります。
形も大きさも気に入ったので、買おうとしたときでした。
そのティーポットが、日本の燕三条で作られたものだと教えられたのです。
新潟県は燕三条、といえば金属加工で有名な街。
だからといって、なぜそんなものがロンドンにあるのか。
実は当時から、日本の金属加工技術は世界的にも有名だそうです。
そんな技術力の高い職人が、日本にもいると知ったマスターは、
同じものを作れないか考え始めます。
こうして、職人に製造を持ちかけたマスター。
紅茶のプロとしての知見を活かしながら、設計にも参加します。
そして完成したのが、1人用ステンレスティーポットでした。
ミルクティーがもっとおいしく!!
ステンレス製のティーポットは、抽出力バツグン。陶器製のティーポットと比べて熱伝導率が高いため、紅茶がしっかりと抽出されます。
味とコクはより濃く、キレはよりシャープに。ミルクを入れても、紅茶の風味をはっきりと感じ取れるでしょう。ティーポットの素材次第で、ミルクティーのコクも変わるんです。
実は、ロンドンティールームの店舗で紅茶を提供する際も、ミルクティー向けの紅茶にはステンレスティーポットを使っています。濃いミルクティーを提供できるのは、ひとえにステンレスティーポットのおかげです。
ご家庭にステンレスティーポットがあれば、お店のような味のミルクティーが楽しめる……、かも。
材料は最高クラスのステンレス
使われているステンレスは、工業製品などにも使われる「18-8ステンレス」。実はこれ、ステンレスの中でもかなり高級で、かつ性能のいい金属なんです。
そもそもステンレスとは、鉄にニッケルとクロム(どっちも金属)を混ぜ込んで、強度を上げたものになります。「18-8」は、ニッケルとクロムがどの程度混ざっているかの数字です。基本的に、数字が大きいほど高級なステンレスになります。
一般的なステンレス製カトラリーは、「18-0」ステンレス。ちょっといいものになると「18-8」、高級品になると「18-10」です。18-8ステンレスは、日常で目にするステンレスの中で、ほぼ最高クラスの品質といえます。
そんな18-8ステンレスでできたティーポットは、繊細なデザインでありながらとても頑丈。よほどの衝撃がなければ、へこんだり変形したりする心配はないでしょう。ステンレス(Stain less=サビがない)の名前通り、扱いに気を付ければサビもつきません。
製作のむずかしさと、職人の腕
ステンレス製品は丈夫で便利な素材です。その一方で、加工するのが難しい、職人泣かせの素材でもあります。主な理由は、次の3つです。
- 力を加えると固まる
- 熱を通しにくい
- 急激に冷やすと割れる
一定以上の力を加えると固まって、それ以上加工ができなくなる。削ったり切断したりするときの熱がステンレス本体に逃げないので、ステンレスより先に工具が悲鳴をあげる。おまけに急激な温度変化に弱く、下手をすればパッカリ割れて使い物にならない……。利用するのは便利でも、加工するのはひと苦労です。
それに加えて、作りたいものが小さいほど、加工は難しくなります。加工の際に許されるズレが、非常に小さいためです。大きいモノなら0.1ミリ(これでも十分に難しい)許容できるところを、小さいモノだと0.01ミリ単位で管理しなければなりません。
このように繊細な加工を、手のひらに乗るような小さいティーポットでやろうというのですから……。製作は困難を極めます。一部の腕のある職人でなければ、とても製作できないでしょう。
コラム:元工学部のスタッフが見てみた
というわけで、大学で金属加工なんかを学んでいたスタッフが、ティーポットの細かいところまで見てみることに。
結論、『こんなのどうやったらできるんだ』のオンパレードでした。
- 2枚の板を曲げ、真ん中でくっつけた本体
- 絶妙なカーブを保った注ぎ口
- 手になじむ持ち手
- 真っすぐ均等に整った溶接痕
どれ一つとっても、超一流のプロにしかできないことでしょう。紅茶専門店まで来て、このような製品を見ることになるとは思いませんでした。
素人に毛が生えた程度の知識なので、どこまで理解できたものか怪しいですが……。
1人用ステンレスティーポットで、いつものティータイムがちょっと豪華に。
今回再販するステンレスティーポットは、おひとり時間にぴったりな1人用サイズ。小さくカワイイ見た目ながら、しっかり紅茶を淹れられます。
熱伝導性のよいステンレスを使ったことで、抽出力がアップ!淹れた紅茶は、ミルクティーにしても風味がしっかり残ります。
ティータイムに使ってもよし、飾ってもよしのステンレスティーポット。ぜひ手に入れて、大切に使ってあげてください……。
※お買い求めの方へご利用上の注意
1人用ステンレスティーポットから紅茶を注ぐ際は、
茶こしを取り外してから傾けてください。
スタッフで試したところ、
写真のように紅茶がこぼれてしまい……。
やや悲しいことになってしまいました。
皆様も、ご使用の際はお気をつけくださいませ。