Tea Story 読めばきっと好きになる紅茶のお話

2014.09.25

新しく喫茶店を開く人が紅茶メニューを作るときに気をつけること(第4回)

twitter

「独自の味」は難しい?

さて今回は紅茶でお店の看板メニューを作ろうと思う場合、お店でオリジナルブレンド、お店独自の味の紅茶を出すのは難しいのかという話に触れたいと思います。

紅茶の世界ですと、例えば「○○農園のダージリン・セカンドフラッシュ」といったように単一農園の特定の時期に収穫された茶葉のほかに、様々な農園、様々な時期の茶葉を組み合わせ味を整えた「ブレンド」というのが一般的です。

単一農園・特定時期の茶葉

単一農園・特定の季節のものだと、「特徴が出すぎる」つまり良い部分もそのまま出てきますが悪い部分も出てくるわけです。香りが豊かに仕上がった場合、香りが苦手な方、控えめな香りが好きな方にとっては好まれないものになってしまいます。

万人受けするというよりは、「毎年の味の違いを楽しむ」ような飲み方になるのです。

さらに時期が固定されると農作物ですから単価も年によってバラバラです。極端な話、去年1,000円で飲めたものが今年は2,000円するかもしれません。

味を安定させるためのブレンド

こんなふうに、「前飲んだときは美味しかった(安かった)のに、今年飲んだら美味しくなかった(好みに合わなかった、高かった)」ということを防ぎ、いつ飲んでも同じような価格、できれば安く、ということを目的とするのが「ブレンド」です。

さらに、飲まれる地域によって硬水、軟水とありますから飲まれる水によってもブレンドを変えたりします。

ブレンドは毎年変わらない味、品質、価格を求めるために、特定のレシピ(こういう味で香りで水色で・・・)を実現させるため、毎年の様々な茶葉の味を試したブレンダーがいろんな産地の茶葉、いろんな時期の茶葉を変えてブレンドします。

渋すぎるときは、味を邪魔しないで渋さが控えめな茶葉を混ぜたりしてバランスを取るんです。

オリジナルブレンドの紅茶を出すには?

そしてこのブレンドという作業は、かなり訓練されたブレンダーと大規模なブレンド工場が必要です。

日本でこのように専門的なブレンドが出来る工場はひとつ、ふたつといったところです。

話は戻りますが、このようなブレンドでお店独自のものがほしい、日本でひとつだけのブレンドを店におきたい、といった場合、基本的には無理があります。

大規模な工場が必要ですし、大規模な工場へ委託しようとすると大量のロットが必要です。何百キロ、何トンと発注できるのでしたらもちろん委託は可能だと思いますが、こういうことが可能なのは例えば一気に全国チェーンを開けるようなカフェや、物販として茶葉の販売で一気にさばけるようなお店です。

ブレンド紅茶に、名前をつける。

ではお店オリジナルの紅茶が出せないのか、というと実は可能です。

コーヒーなどの取り扱いのある業者さんが持っているカタログ等には業務用の茶葉があったりします。

また、紅茶専門店や茶葉の販売店などでも業務用の茶葉の販売があったりします。それを仕入れた上、オリジナルの名前をつけることです。

日本で唯一の味というのは残念ながら難しいのですが、現在日本ではこういった形でオリジナルの紅茶を提供しているお店がほとんどだと思います。

インドやスリランカの現地に工場を持っていたり現地工場と契約したりしているお店はありますが、それもかなりのロットを捌かないといけません。

当店では例外的に(過去にロイヤルミルクティーを作った時の経緯などから)大規模工場をもっている三井農林さんにブレンドはお願いしていますが、これは本当に例外だと思います。

ブレンドとミックス

また、すでに出来上がったブレンドの紅茶を混ぜることは「ミックス」と言われています。

これは非常にバランスが難しいため、プロの間でもあまり行われていません。
ブレンダー自体が紅茶の味に関しては専門的なプロですから、そのブレンダーが作り上げた微妙なバランスを劣化させずに混ぜることは難しいですし、またメリットも少ないためです。

今回は少し専門店な話が多くなりましたが、次回は「世間一般の嗜好の変化」をお伝えしたいと思います。

Blog Category

ブログカテゴリ一覧

Page TOP