「ロイヤルミルクティー」「スパイスティー」「チャイ」
「どれも同じじゃないの?」という方も多いのではないでしょうか。
当店にもたくさんご質問をいただく項目のひとつです。
実は、先日”「ロイヤルミルクティー」と「チャイ」の違い”についての記事を投稿しました。
こちらもとてもご好評いただいておりますが、
そこにもう1種類「スパイスティー」というメニューもくわえて、
当店の視点からそれぞれの特徴と違いを説明してみたいと思います。
煮込み紅茶の種類と違い
今回取り上げるのは、次の3種類です。
- チャイ:甘みをメインに楽しむ
- スパイスティー:スパイスと紅茶の香味を楽しむ
- ロイヤルミルクティー:茶葉と牛乳本来のうまみを楽しむ
一応明確に区別されてはいるのですが、この3者は区別が非常にあいまいです。明確な定義がないまま普及し、様々なお店が名前を使った結果なのでしょうか。実際のところ、見た目だけでは違いがほとんどわかりません。
チャイは最初から甘いもの
チャイはインドの国民的な飲み物であり、最初から砂糖が入っています。日本で提供されているものの大半は、スパイスも入っているイメージです。しかしながら、インドではスパイスが必須ではないんだとか。
インドのチャイは、もともとイギリスに輸出した後の細かい茶葉を使ったレシピとして生まれました。細かい茶葉をそのまま抽出しても、苦みや雑味がひどいため、砂糖やミルクを入れるようになったといいます。
現地のチャイは、日本からは考えられないくらい甘いようです。味覚の違いもありますが、メインの目的は炎天下の気候を乗り切ること。体にエネルギーを供給する、さながらエナジードリンクのような立ち位置なんですね。
そんなチャイが日本で広まったのは、『伽奈泥庵』と『カンテ・グランデ』の影響が大きいでしょう。1970~80年代ごろ、大阪にあった2つのショップで提供されたのが、日本のチャイのはじまりだといわれています。複数のスパイスを合わせて(マサラとも)を入れるため、店のこだわりによって味が大きくことなります。
※2008年1月1日発刊 エルマガジンmook「京阪神 お茶の店」P28より
スパイスティーはチャイを基にしたもの
スパイスティーは、煮込んだ紅茶にスパイスを加えた飲み物です。チャイとは異なり、作る段階では砂糖を入れません。提供されたスパイスティーに、後から自分で砂糖を加えて、味を調整できます。
スパイスティーの基になったのは、インドのチャイです。現地のレシピを日本人の口に合うよう改良し、シナモンをはじめとするスパイスを一種類のみ加えています。
そんなスパイスティーを最初に提供したお店が、紅茶専門店『ティーハウス ムジカ』。もっとも人気なのは、シナモンを入れた「シナモンティー」です。最盛期は、4人に1人が注文するほどだったといいます。
10年ほど前に、大阪の堂島から芦屋に移転されています。
※1973年7月1日発行 「紅茶技術講座Ⅱ 市場別商品管理と抽出法」荒木安正 P216より
ロイヤルミルクティーは砂糖なしでも飲める
当店の定義では、ロイヤルミルクティーを「砂糖なしでもおいしく飲める」ものだと位置づけています。
一般的にロイヤルミルクティーとして提供されている茶葉は、煮込むとエグ味や雑味が出るため、砂糖が欠かせません。そのためか、現在でも「ロイヤルミルクティーは甘い」という認識があります。
ロンドンティールームの場合、ロイヤルミルクティーはイギリスのミルクティーを再現する、というコンセプトの商品です。そのため、独自にアッサム産茶葉とセイロン産茶葉をブレンドし、雑味が出にくいよう調整しています。
ロイヤルミルクティーは日本特有のもの
よく言われる話ですが、イギリスに「ロイヤルミルクティー」という名前の紅茶はありません。ロイヤルミルクティーという名前は、一種の和製英語です。
「ロイヤルミルクティー」という名前が生まれた経緯については、複数の説があります。当店が開店した時期には、少なくともロイヤルミルクティーという名前があったことは確かです。
当店の場合は、イギリスの濃厚なミルクティーを、日本の材料で再現することをコンセプトとしています。紅茶と牛乳の風味を強く感じられるミルクティーを作るために、煮込み調理を採用しました。
ロイヤルミルクティーの発祥について詳しくはこちら▼
まとめ
まとめると、
- チャイ:甘みをメインに楽しむ
- スパイスティー:スパイスと紅茶の香味を楽しむ
- ロイヤルミルクティー:茶葉と牛乳本来のうまみを楽しむ
といった具合です。
このような煮込みミルクティーが今日まで残り、愛されているのは、今回ご紹介した名店の尽力によるものでしょう。産地ものの紅茶が優遇されてきた時代に、濃厚でまろやかな舌触りのミルクティーを定着させたのですから……。名店と呼ばれるまでに、どれだけの苦労があったかは計りしれません。
名前の区別は曖昧でも、ミルクティーは現在に至るまで愛されている。その事実が、一番大切なのではないでしょうか?