
ロンドンティールームの夏の定番と言ったら、キリっと冷えたアイスロイヤルミルクティー。真冬でもアイスロイヤルミルクティーを注文されるほど、大人気のメニューです。
我々スタッフもお店でいただいたり、マスターから差し入れを頂いたりして、ときたま味わっています。注文して、飲み終わるたびに、また次も飲もう……というほど、クセになる味わいがたまりません。
とはいえ、毎回飲んで「おいしい(思考停止)」では、魅力を伝えようにも伝わりません。いつも味わって飲んでいるつもりでしたが、今回はちょっと集中。アイスロイヤルミルクティーを味わってみた感想を、できるだけ伝わるように書いてみました。
コク、香り、うまみ。すべてが詰まったひとくち

アイスロイヤルミルクティーを注文すると、大きめのオリジナルステンレスマグに入って出てきます。一緒にガムシロップもでてきますが、素材の味を吟味するため、まずはそのまま飲んでみることに。
ストローで吸い上げたとたん、感じる衝撃。紅茶の華やかな香りと、重厚でコク深い風味が、弾けたように広がってきます。茶葉から抽出されたうま味と、舌の根から染み入るような甘み、そして渋さともほろ苦さとも違う奥深い味わい。様々な風味が折り重なって、一口のうちに広がってきます。
この最初の一口のインパクトばかりは、文章で100%伝えることができません。実際に体験してみないとわからない、奥行のある味です。
この味を支えるのは、ロイヤルミルクティー専用にブレンドされた特製茶葉。専用茶葉だからこそ、ティーポットよりも過酷(茶葉にとって)な煮込み調理によって、茶葉のおいしい風味だけを限界まで引き出せるのです。
紅茶とミルクの一体感。「混ぜる」だけでは出ない味

最初のインパクトに驚いている間も、風味はゆっくりと変化していきます。紅茶味は、少しずつ落ち着いていき、インパクトある紅茶の風味を包み込むようにして、ミルクの風味が出てくるのです。じっくりと紅茶の風味を楽しむうち、少しずつミルクの甘みを探し当てられるようになっていきます。
口の中が落ち着くと、コクや香りはすーっと引いていき、ミルクと茶葉の甘みを感じてきます。砂糖なんて入れていないはずなのに、確かに感じる甘み。この甘みまでたどり着くと、「これで完成された」ような満足感に浸れます。
しかし、そんな風に味わおうとするころには、とっくに一口が終わっていて。
またこのうま味が欲しくなって。
もうひと口、もうひと口と、飲み進めてしまう。
紅茶とミルクが一体になっているからこそ、こんなクセになる味が完成するのです。

この一体感のヒミツは、茶葉をお湯で煮込んで紅茶液を作り、そこにミルクを加えて一緒に煮込むこと。お互いを混ぜてから熱を加えて煮込むことで、よりマイルドで一体感がある味わいになります。
別の料理に置き換えてみると、玉子焼きに近いです。たとえば、完成した玉子焼きに醤油をかけるのと、生地に醤油を混ぜてから焼き上げるのとでは、味が変ります。混ぜて焼くことで醤油に熱が入り、塩味・うま味が玉子に馴染むためです。
アイスロイヤルミルクティーの複雑で奥深い味わいは、紅茶とミルクを一緒に煮込むからこそ。濃く抽出した紅茶液と乳脂肪分の高い牛乳がしっかりと絡み合い、それぞれのコクが重なることで、複雑で奥深い味が生まれています。
大人味から優しい味へ。ガムシロップで繊細な味へ

そうして半分くらい飲んだところで、ようやくガムシロップの存在を思い出します。シロップを少し、いやもうちょっと多い方がいいか、と入れてみる。甘党なら多めに入れたって構わない。付属のスプーンで、氷ごとかき回し、ほどよく味が均一になったところでもう一口。
その瞬間、最初の一口とはまた違った、甘美な衝撃に襲われます。紅茶のインパクトから、ちょっと遅れてガムシロップの甘み。そしてミルクの風味、茶葉の甘みはより際立って感じられるように。ガムシロップを足すことで、味の変化をより繊細に感じられます。
シロップなしは、ガツンとくる大人の味。シロップを入れれば、優しく繊細な味。この表情の変化も、アイスロイヤルミルクティーの魅力です。
最後までキリっと冷たく、濃厚なまま。溶けにくいかち割氷

そうして楽しんでいるうち、いつの間にかマグカップは空に。最後の一口まで、濃く芳醇な風味でした。
マグカップの中に目を落とすと、残った氷がきらきらと光っている。そしてそのサイズが、飲み始めてからほとんど変っていないのです。
最後まで濃厚な味と、溶けていない氷…。アイスロイヤルミルクティーに入っている氷は、ゆっくりと冷やして作られた「かち割氷」なのです。手間をかけ、ゆっくり冷やされた氷は、通常の氷よりも溶けにくくなります。
アイスロイヤルミルクティーが最後まで冷たく、濃く楽しめるのは、大きく溶けにくいかち割氷だからこそです。
何度でも飲みたくなる、40年の歴史の味

今回は、アイスロイヤルミルクティーのおいしさをつらつらと語ってみました。今回、アイスロイヤルミルクティーを改めて味わってみたことで、その奥深さに気づけたと思っています。
さらに、このバランスは日によって変わるため、当店のマスターは毎日味を調整しているそう。スタッフのいるオフィスからでも、たびたびマスターが配分を考えている様子が聞こえてきます。
そんなアイスロイヤルミルクティーを味わい終わると、「また飲みたい」と思ってしまうのが不思議なところ。飲み終わってからも、舌の根に、紅茶のうま味と茶葉の甘みが少しの間だけ残っているからでしょうか。はたまた、鼻から紅茶の香りが抜ける感覚を、かすかに感じるからでしょうか。
アイスロイヤルミルクティーそのもののおいしさはもちろんのこと、この飲んだ後のひとときを感じたいがために、また飲みたくなる。
店を訪れてからしばらくして、「また飲みたいな」と急に思い出す。
そうしてまた飲みに来て、余韻に浸る。
きっとまた、何でもないときにこの味を思い出して、たとえ真冬でも、また飲みに来るんだろうなと思います。
普段は「おいしい」「また飲みたい」で終わっていた一杯ですが、今回、その「また飲みたい」がどこから来るのかを一つずつ追いかけてみて、味の奥にあるものまで少し見えたような気がします。
アイスロイヤルミルクティーは、ロンドンティールームのロイヤルミルクティーの原点ともいえる一杯なのだと感じます。
今も続く味づくりの根っこには、この一杯で大切にされてきたものがあるのかもしれません。


