
▲スリランカの紅茶畑。もとはコーヒー畑だったのだろうか
セイロンティーは、スリランカで作られた紅茶をまとめた呼び名です。紅茶商品の名前や説明書きに、当たり前のように出てくる言葉でもあります。ここまで聞くと、ずっと昔から紅茶を栽培してきた国のように聞こえますが……。
実のところ、スリランカはもともとコーヒー大国。紅茶の生産が始まったのは、ここ100~200年のことです。にもかかわらず、どうして紅茶の産地として有名になったのでしょうか?
今回のお題は、セイロンティーのはじまりについて。100年ちょっとで有名になった産地、スリランカの歴史をご紹介します。
「スリランカ」と「セイロン」

▲紅茶を運搬する列車と『ナインアーチブリッジ』。インスタ映えするスポットとして、世界中から多くの人が訪れるスポット
そもそも、セイロンという名前はどこから来たのか?これはスリランカの旧国名であり、イギリスが名付けたものです。
スリランカはイギリス、オランダ、ポルトガルなどの国に支配されてきた植民地であり、その都度名前が変わっています。1900年代後半になり、独立国家になった際、改めてスリランカという名前になりました。
スリランカ、という単語は、サンスクリット語で「光り輝く島」の意味。セイロンは「ライオンの島」の意味なんだとか。
コーヒーから紅茶への転向

さて、そんなスリランカは1800年代初頭まで、世界トップクラスのコーヒー生産国でした。しかし、「サビ病」の流行をきっかけとして、紅茶生産へと舵を切ることになります。
サビ病とは、コーヒー豆が採れる「コーヒーノキ」にカビ菌が住み着き、光合成ができなくなる病気です。当然、木の成長も止まるため、コーヒー豆の収穫が難しくなります。厄介なことに空気感染するため、当時の技術で防ぐのは難しく……。発症から約10年で、スリランカ国内のコーヒー産業は壊滅することになります。
コーヒー農園を営んでいた人々は、代替となる作物を探しました。その結果、スリランカの環境で育ちやすいとして、紅茶農園を始める人が多かったようです。この後、スリランカ産紅茶である『セイロンティー』は、一大ブランドとなります。
セイロンティーを創ったふたり
そんなセイロンティーがブランドとして浸透した背景には、ふたりの人物が関わっています。『ジェームス・テイラー』と、『トーマス・リプトン』です。
セイロンティーの父『ジェームス・テイラー』

▲1894年のジェームス・テイラーの肖像。投稿者:Shyamal
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:James_Taylor_1894.jpg?uselang=en#filehistory

▲キャンディのマハイヤマ墓地にある、ジェームス・テイラーの墓。巨漢だったため、総勢24人がかりで棺を運んだそう
ジェームス・テイラーは、スリランカで初めて紅茶を栽培し、紅茶栽培への転換を推し進めたスコットランド人です。16歳のときスリランカに移住し、コーヒー栽培の助手をしていました。
ある時テイラーは、キャンディ地方にあるルーラコンデラ茶園を任されます。この茶園で、彼は独自にチャノキを栽培し始めました。栽培方法から製茶工程まで、細かに実験を繰り返したのです。
そんな折に、サビ病が流行。コーヒー農家たちが紅茶栽培に転向する中で、テイラーの研究が注目されだします。そして彼の研究成果を用いて栽培されたセイロンティーは、ロンドンで高い評価を受けるようになりました。
現在も高い評価を受け続ける、セイロンティー。そのブランドを作ったのは、他ならぬテイラーです。
紅茶王『トーマス・リプトン』

▲サー・トーマス・リプトン。投稿者:Shyamal
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Thomas_Johnstone_Lipton.jpg
セイロンティーを語るうえで、忘れちゃいけない方がもうひとり。現在も続く紅茶ブランド『リプトン』の創始者、『トーマス・リプトン』です。
セイロンティーが有名になり始めた1890年、リプトンはスリランカ(当時はセイロン)を訪れます。彼はわずか数週間の滞在中に、ウバ州の広大な茶園を購入。本格的な紅茶生産に乗り出しました。
当時のリプトンは、より安く紅茶を手に入れるため、自社で農園を保有する計画を立てていたようです。すでにディーラーから紅茶を買い付けてはいたものの、どうしても流通にはお金がかかる。ならばと少しでも安く紅茶を提供できるよう、自分で茶園を持つことにしたのです。
現在では、安くて美味しい紅茶が手に入るのは当たり前。しかし、そんな当たり前の陰に、リプトンの尽力があったのは間違いないでしょう。
おわりに

▲世界遺産にも指定される街・キャンディ。仏教の聖地でもある
現在は、世界的に有名なセイロンティー。しかし、セイロンティーの栽培技術が確立され、安定供給が始まるまでには、多くの苦難がありました。
日本人の味覚にはセイロンティーが合うようで、紅茶全体の消費量のうち6割以上がセイロン産なんだとか……。そんなセイロンティーを簡単に飲めるのは、決して当たり前ではないようです。セイロンティーを飲むとき、少し思い出してみてください。


