チャイといったら、甘くてスパイシーな風味が特徴の、インドチャイを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
インド生まれのチャイは、強い甘みと程よいスパイスの辛みが効いた、クセになる味わいです。寒い日はもちろん、暑い日にグッといくと、ちょっと活力が出てくる気がします。
そんなチャイと、当店のウリであるロイヤルミルクティー……。
見た目だけ比べても、ほとんど一緒ですよね。
作り方が似ていることもあり、違いがわからないとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、チャイについて徹底的に解説したいと思います。
非常にボリュームの多い記事となってしまいましたが、どうぞ最後までお付き合いくださいませ……。
ロンドンティールームのロイヤルミルクティー
さて、まずは当店自慢のロイヤルミルクティーからご紹介します。
ロンドンティールームの看板メニュー、「ロイヤルミルクティー」。今でこそ有名な「鍋で煮込んで作る」ロイヤルミルクティーを開発し、提供したのはロンドンティールームが初めてです。
ロイヤルミルクティーは、チャイと同じく煮込んで作ります。煮込む目的は「イギリスのミルクティーを再現」するのに必要だったからです。
当時の日本にあるミルクは、イギリスのものと比べてやや水っぽく、そのまま入れても濃厚な味が出ません。そこで考えついたのが、お湯・茶葉・牛乳を煮込んでより濃厚な味わいを出すことでした。
さらに、茶葉をブレンドして味を調節するイギリス流の考え方に基づき、ロイヤルミルクティー専用に茶葉をブレンド。煮込んでもエグ味・雑味が出にくく、紅茶の甘みとうまみを引き出すオリジナル茶葉のみを使用します。
紅茶の自然なうまみと甘みを楽しめて、砂糖なしでも飲めるミルクティー。初めて紅茶を飲む方にも、紅茶の美味しさを知ってもらえるような、優しい味わいのミルクティーです。
インドの「生活の知恵」から生まれたチャイ
では、チャイとはどういう物なのかというと。茶葉を煮込んで、ミルクと砂糖を加えて作る紅茶です。地域によっては、スパイスを加えて作ることもあります。
そんなチャイは、1800年代のインドで生まれた、意外に歴史ある飲み物です。
美味しい紅茶が飲みたくて
チャイは、17世紀のインドで生まれたといわれています。
1823年、インドで「茶の木(チャノキ)」が見つかりました。何を隠そう、アッサム産紅茶が採れる木です。現代では当たり前に飲まれているアッサム紅茶ですが、当時としては大発見でした。 当時、紅茶は中国でしか採れないものだ、と思われていたためです。
たちまちインドは紅茶の一大産地になる……のですが、当時のインドはイギリスの植民地も同然。美味しい紅茶葉はすべてイギリスに輸出され、国内には茶葉がほとんど残りません。
残ったわずかな茶葉をかき集めてみても、できるのは苦い紅茶ばかり。せっかく作った茶葉を、どうにかして飲めないものか…。そうして考えられた方法が、茶葉を煮込んで濃く出し、後からミルクと大量の砂糖を加える調理法でした。
茶葉を煮込むと出てくるエグ味・雑味は、砂糖の甘みと、スパイスの風味でカバー。結果として、甘みと辛みが絶妙にマッチしたチャイが完成します。
ことインドだけに限らず、ロシア、トルコ、モロッコ……。様々な国で、独自のスタイルになった「チャイ」たちは、みな生活の知恵から生まれたものです。茶葉が手に入りにくい環境で、どうにか美味しい紅茶を飲みたい。そんな人々の渇望が、チャイを生み出したのかもしれません。
意外と知らないチャイのひみつ
本場のチャイは、日本と一味違います。作り方や材料も違いのひとつですが、何よりもチャイの文化的な位置づけが違うんですね。
ここでは、次の4つに注目しながら、インドでのチャイ事情を見ていきましょう。
使うのは細かい茶葉!
チャイにぴったりな茶葉は、「アッサムのCTC」と言われています。しかし、本場の作り方では、もっと細かい茶葉を使うんですね。紅茶のグレード(等級)でいうと、「ダスト」と呼ばれる茶葉です。
そんなダスト茶葉すら、当時のインドでは非常に高価で、少量しか手に入りませんでした。そこで、少量の茶葉でも紅茶をしっかり抽出できるように、鍋で煮込む調理法が考案されたのです。
茶葉を煮込むとどうしてもエグ味・雑味が出るので、砂糖とスパイスを入れて味を調えます。甘い紅茶を飲みたかったのではなく、紅茶を飲むために砂糖とスパイスを入れたんですね。
継ぎ足して作る
チャイのレシピは、店によって様々。茶葉をお湯から煮出して作る店もあれば、牛乳で茶葉を煮込む店もあります。しかし、牛乳で茶葉を直接煮込む方法では、十分に紅茶の成分が出ません。
そこで、以前に仕込んだチャイを残しておき、そこに茶葉とミルクを継ぎ足して調理します。こうすることで、紅茶のうまみと砂糖・スパイスの風味が濃縮され、よりコク深いチャイになるんだとか。
生活に根差したチャイ
インドの人にとって、チャイはなくてはならないもの。日本におけるコーヒー以上に、生活に欠かせない飲み物です。
インドの気候は熱帯なので、日中の気温は最高50℃を超えます。日本人にとっては、歩くことすらままならない気温です。この暑さをしのぐため、インドの人は日に4~8杯ほどチャイを飲むのだとか。
現地の会社には、チャイ休憩の時間があることも。インドの人にとって、チャイは厳しい環境を生きぬく手段でもあるんですね。日本人でいうところの、エナジードリンクの役割も兼ねているようです。
日本のチャイは大阪から広まった
さて、そんなチャイが日本で広まったのは、6~70年代のことです。「ティーハウスムジカ」や「伽奈泥庵(カナディアン)」など、現在でも有名な紅茶のお店が、チャイの提供を始めました。
最初に誕生したのが、ティーハウスムジカで1968年に提供された「スパイスティー」です。本場インドのチャイのレシピを改良し、スリランカ産の茶葉を使用して、日本人がより好む味を生み出しています。
一方で、インド人の方から教わった味をそのまま届けたのが伽奈泥庵(カナディアン)でした。もともとカナダ料理店だった「カナディアン」から名前を変え、チャイの提供をはじめたんだとか。
こうして、大阪にあった2店の人気が上がるにつれ、関西以外でもチャイを提供する紅茶専門店が増えていくことになります。