前篇に引き続き後篇です。今しばらくおつきあいください。
2. 淹れた紅茶液について (専門用語でリカーと言います)
一般論では「色」「味」「香り」の3拍子がバランスよく揃っていれば文句無しです。
しかし、嗜好品ですから、わたしは、味は薄くても「色」がきれいなほうが良いとか、いや「やはり香りが一番大事」だと言う人もいる訳ですから、一概には言えません。要は3点のバランスだと個人的には思います。
しかし、最近の傾向は、これらの1点の特徴だけを捉えて、謳い文句にして販売するので、一般消費者はその特徴が少ないと「安物」「品質の悪い茶葉」などのレッテルを貼りがちです。
たとえば、ダージリンの1st Flush などが良い例です。どこどこの茶園の今年最初に摘まれた商品 DJ-01(ダージリンで採れたその年最初の紅茶葉と言う意味)です。
繊細な香りは、紅茶界の女王などの謳い文句。そして価格も飛びぬけて高くなります。(お金に余裕のある人は買って飲んで見るのも良いでしょうが!)
要するに、売る側からだけの一方的な情報であるので、必ずしも消費者の大半が「評価」した訳ではないのです。ですから、このような宣伝文句に惑わされず、自分の感性で選ぶべきです。(もちろん宣伝文句が正しいこともあるでしょう)
水色
さて、水色(専門用語で紅茶の抽出液の色のことを言います)は、正常に抽出した場合、大きく分けて3つになります。
濃いめの鮮紅色系
(セイロン・ディンブラ、セイロン・ウバ、ダージリン・2nd Flush, ケニヤ中国・キームンなど)
濃褐色系
( インド・アッサム、セイロンの中・低地産など)
淡黄橙色系
( ダ-ジリン・1st Flush、セイロン・ヌワラエリヤなど)
すべてにおいて、水色は、「クリアー」(濁りがないこと)、異臭がないことが前提です。
水色は、上記の区分に拘束されることなく、「紅茶葉」で述べた色の違いが出る条件を思い出して柔軟に考えてください。紅茶は毎年季節により変わる農産加工品です。(工業品のように品質が必ず一定になるわけではないのですから。)
香り
次は、「香り」です。これこそが紅茶を特徴付ける最大のポイントですが、残念ながらここでは、言葉での表現は控えます。
なぜなら美辞・麗句を並べ表現をしても、同じ場所で、同時に飲むなら別ですが、紅茶を飲む人が同じ理解、感応すると限りません。代表的な産地の茶葉や、有名ブランドのブレンド品を何回ものんで、自身の舌、鼻で実感するしかないでしょう。
Try and Error = 試行錯誤です。1回や2回であきらめないで、根気良く続けることです。そのうちに自分の感覚で、微妙な違いが理屈ではなく分かり始めます。おそらく言葉で表現が出来ないような感覚のはずです。 それで自分の好みであれば良し、好みでないなら「うっちゃって」おくことです。
3.茶殻について
紅茶を淹れた後の茶殻は、殆どが淹れる前の茶葉の外観評価と一致します。 鮮やかな赤銅色の原料茶葉は、水色もきれいな鮮紅色であり、香もまずまず、茶殻も輝く赤銅色をしています。 グリーンっぽいダージリンの1st Flush は、緑茶に似て茶殻も緑っぽい葉が多い。
茶殻は、OPであれ、BOPであれ、またCTCであれ熱湯で適度な蒸らし時間であれば、あたかも「乾燥ワカメが水で戻るように」「開き切る」(乾燥した茶葉が元の生茶葉の形状に戻る)はずです。抽出後は、茶殻を広げて完全に開いているか観てみましょう。開いていなければ蒸らし時間が不足か、湯温が低いかです。数回試せば、蒸らしの時間と、開き具合の関係は体感できるはずです。
次に「香」です。茶殻を鼻で嗅いで見ましょう。抽出液を飲む時は、舌、鼻両方で感じますが、茶殻の場合は、鼻だけですから飲んだ時の印象とは異なります。香の強弱を確かめる程度で良いでしょう。あくまで、紅茶液を飲んだ時の全体の印象で判断すべきだと思います。
4.自分の好みを見つける
いよいよ最後の段階です。
紅茶を飲んで自分の好みを見つけることです。個人の「感覚」は、その人が辿った経験にかなり大きく左右され、それが「好み」にも影響します。
ですから、教科書などで「000紅茶は、 xxxの点が大きな特徴」などと言う言葉は、とりあえず「脇に置き」、あくまで自分の感覚で確認することです。
他ならぬ自分が飲む紅茶ですから、他人の影響はとりあえず排除しましょう。反対に、他人の感覚には「寛容の精神」で臨みましょう。ゆったりとした、楽しい時間は、人間を大きくします。
ここに至ればあなたは立派な「紅茶人間」です。
では、熱々の紅茶でゆったりお過ごし下さい。