マイケル・ボンドが描いたイギリスの国民的キャラクター、「くまのパディントン」。全世界で映画が公開されたことや、エリザベス女王と夢の競演をしたことで、大きな話題になりましたね。
そんなパディントンは、テディベアとしての人気が非常に高いことでも有名。
現在でも様々なメーカーから製造・販売されているパディントンベアですが、最初にパディントンベアのぬいぐるみを作ったのは、今は無き小さな会社だったことをご存じでしょうか?
世界の人気者「くまのパディントン」
↑当店には3人(頭?)のパディントンがいます
パディントンは、1958年からマイケル・ボンドによって描かれた小説「くまのパディントン」から始まりました。最初の本の出版以後もシリーズは続き、今までに全世界で3500万部というヒットを出しました。
テレビアニメや絵本、映画など、パディントンはさまざまな媒体で活躍を続けています。
イギリスの国民的マスコット、ということもできるでしょうか。日本でいうところのド〇え〇んとかハ〇ーキ〇ィとか、そんな感じの扱いみたいですね。
そんなパディントンのぬいぐるみは、これまた世界中で大人気です。
パディントンベアのぬいぐるみ
↑赤コートのパディントン。旅行カバンを下げています
パディントンのぬいぐるみを初めて製造したのは、「ガブリエル・デザイン社」という小さな会社。
ガブリエルデザイン社の創業のきっかけは、同社を創業したシャーリー・クラークソンが、娘に贈ったパディントンのぬいぐるみが(娘はもちろん、ご近所さんからも)好評だったことです。
元々ぬいぐるみなどを作っていたシャーリーは、パディントンぬいぐるみが売れ出したのを機に、作者のマイケルからライセンスを取得。
1972年にガブリエル・デザイン社を立て、本格的にパディントンベアを売り出しました。
結果、パディントンベアは大ヒット。1975年にライセンスを取得した、アメリカのエデン・トイズ社とともに、年間8万個以上を売り上げる超人気商品になりました。
↑見上げるようなポーズをしているようにも見えます
といっても、その個数の大半は、大量生産体制を整えていたエデン・トイズ社のものと推測されます。ガブリエル・デザイン社はヒットの中でも、手作りにこだわり続けたのです。
最終的にはぬいぐるみのコピー品が大量に出回り、問題の解決に追われた2社は廃業することになりました。
プレミアになったパディントンベア
↑今回お話を伺ったのはこちらのパディントン(うそです)
ガブリエル・デザイン社が廃業した現在、いわゆる「オリジナル」のパディントンベアが、新しく生まれることはありません。
そのためガブリエル・デザイン社製のパディントンは、非常に希少性が高いです。
絶対数が少ないのはもちろん、天然素材で作られているため、虫害に遭いやすく傷みやすいのも、希少性が上がる原因のひとつ。
現状、良い状態で残されているガブリエル・デザイン社製パディントンベアは少ないと予想されます。
ガブリエル・デザイン社製パディントンベアの特徴
ガブリエル・デザイン社製のパディントンは、後年のモデルと比べて違う点がいくつかあります。
顔
現在よく見られるパディントンは、いわゆるテディベアに近い顔をしているものが多いです。
黒一色の目玉に丸っこい顔、という顔立ちですが、、、
ガブリエル・デザイン社製の手作りパディントンは、一般的なテディベアとはまた違った表情をしています。
全体的に面長の顔立ちで、初見だとくまというより、ネズミや犬の類に見えそうです。
目も少し変わっていて、琥珀色の虹彩と黒色の瞳孔が組み合わさっています。
帽子
初期のパディントンには、帽子に安全ピンがくっついています。
後期のモデルにはついていないため、安全ピン付きのパディントンは珍しいのだとか。
実物を触ってみるとわかるのですが、どうやら帽子のつばを固定しておくためのものらしいです。
帽子をとると、ちゃんとクマミミがついてます。
タグ
パディントンが首から下げているタグ。「ダーケスト・ペルーからロンドンへ」と書かれているあたり、電車の切符なのでしょうか?
裏面には「Please look after this bear, Thankyou. (このくまをよろしくおねがいします)」と書かれています。
このタグのモデルは、戦時中に疎開してきた子どもたちが下げていたものだそうです。
自分の名前と住所を書かれたタグを首に下げて、貴重品を入れたトランクを持って、パディントン駅の電車から降りてくる子どもたち・・・。
作者のマイケル・ボンドは、そうした光景を見て、「くまのパディントン」のインスピレーションを得たんだとか。
長靴
↑長靴がチャームポイント
直立のために子ども用の長靴を履いているのも、特徴のひとつです。
ちなみにこの長靴、初めは市販のものだったらしく。
最初期のモデルにはダンロップ社製の子ども用長靴が使われています。
↑当店のパディントンは3頭とも、ダンロップ社製の長靴でした。
ヒットが続くうちに生産が追い付かなくなり、途中から独自ブランドのものに切り替えたようです。
そのためダンロップ製の長靴をはいたパディントンは個体数が少なく、希少性がさらに高くなっています。
トランク
「P.B.」のイニシャルが入った、パディントンのトランク。プラスチック製のものもあれば、鋲付きの本格的な作りのトランクを持ったパディントンもいます。
こちらがプラスチックのもの。パディントン50周年記念でブリティッシュエアウェイズから販売された(と思しき)ものです。
中身は色鉛筆と塗り絵、コイン、写真、切符など。
こちらが、肩掛けのベルトがついたトランク。上のものと同じく、ブリティッシュエアウェイズのロゴが入っています。
こちらはユニオンジャックがあしらわれたトランク。他にも、DVDなどが入ったトランクもあります。
ちなみにイニシャルの「P.B.」はパディントン・ベア…ではなく、「パストゥソ」ベアという読み方をするのだとか。
元々は違う名前だったんですね。
もっともパディントンの名前が広まってしまった今では、あまり意味のないことですが、、、
まとめ
パディントンのぬいぐるみは数あれど、初期に生産された手作りのパディントンぬいぐるみは特に貴重です。
今回、モデルを務めてくれたパディントンは3頭とも、ガブリエル・デザイン社製の初期生産品という触れ込みで、セラーから入手しました。
実際、ダンロップの長靴や面長な顔などの特徴が一致しています。
今回ご紹介したパディントンは、3頭ともロンドンティールームで展示中。トランク片手に、お店でお客様をお迎えしています。
お店にお越しの際は、ぜひチェックしてみてくださいね!