Tea Story 読めばきっと好きになる紅茶のお話

2023.07.05

ロンドンティールームの水出し紅茶について

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今年も本格的に暑い季節が近づいてきました。
ついつい、あたたかいものより冷たいものが飲みたくなりますよね。
でも、キッチンで暑い思いはしたくない…。

そんなときにピッタリなのが、当店の殺菌済み水出し紅茶!
お水に入れて一晩寝かせるだけで、どなたでもゴクゴク飲めるのどごし爽やかなおいしいアイスティーが出来上がります。

さて、お手軽でおいしいのが良さの水出し紅茶ですが、今回改めてロンドンティールームの殺菌済み水出し紅茶についてお話をさせてください。

ロンドンティールームの殺菌済み水出し紅茶について

商品を採用するときのスタンスとして、当店を信頼して選んでくれた方にとって「よりおいしくて、誰でも安心して飲める紅茶を提供したい」を最大のモットーとしています。

ロンドンティールームが殺菌済み水出し紅茶を取り入れたのも、そのモットーに基づいているからです。
当店の水出し紅茶は、静岡の工場で高圧の飽和水蒸気を用いた「気流式殺菌」を行っています。

「乾物なのに水蒸気をあてるの!?」 と、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。

たしかに、茶葉は光や湿度・熱の影響を非常に受けやすいデリケートな性質を持っています。
乾燥している茶葉に水蒸気をあてるなんて茶葉の品質や味に左右されないのだろうか、と疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。

しかし「気流式殺菌」は、紅茶の茶葉をはじめとした乾物の殺菌に適した方法です。

100℃を越える大きな熱エネルギーをもった飽和水蒸気をあてることによって、必要以上に茶葉を濡らすことなく短時間で効率的に殺菌を行えるといったメリットがあります。

近年では日本茶メーカーでも取り入れる企業が増えているほど、注目されている殺菌方法です。

殺菌済み水出し紅茶の発売経緯

もともと、ロンドンティールームでは「ダブルクーリング方式」でアイスティーを提供しておりました。
※ダブルクーリング法の説明はこちらから

「ダブルクーリング方式」とは、まずは紅茶をホットで淹れたら、氷を入れたグラスなどの容器に注ぎ入れて粗熱をとり、すかさずもう一つの氷入りグラスに紅茶を移し変える、急冷方式の作り方です。

しかし、ひと手間かかる上に味のブレが生じやすい作り方であるというデメリットもあります。
氷を溶かさないようにスピードと手際の良さが求められるため、プロでも経験を積まないと難しく、ご家庭で作るには一層ハードルが高い作り方と言えるでしょう。

よりカンタンなアイスティーレシピの需要が高まる中で、気楽に紅茶を楽しめる水出し紅茶が登場し、当店にも「水出し紅茶を販売してほしい」という声が多く寄せられていました。
お湯を沸かさなくても良い上、コツも器具もいらないといった手軽さから、様々な紅茶ブランドでも販売され非常に人気があったようです。

ただ、ロンドンティールームは「需要があるから」というだけでは、商品の採用をしていません。
少なくとも、当店で取り扱う商品は「食の安全」に準じた誰もが安心できるものでありたいと考えています。

それが、“紅茶専門店・飲食事業者”としての責任であり、わざわざ当店に声を寄せてくださった皆様の期待に応えられる最善の形なのではないか、とも考えているからです。

長年飲食に従事していると、紅茶のみならず食にまつわる複数のメーカーとお話をさせていただく機会があります。
どのメーカーも「より高い安全性をお客様にお届けしたい」というひとつの想いから、様々な施策に取り組んでいることを語ってくれました。

その姿勢に飲食を生業にする身としても改めて大きく賛同すると共に、「数ある店舗から当店を選んでくれたお客様の信頼に報いたい」という気持ちが更に一層強くなっていった頃合いでもあったのです。

だからこそ、当時紅茶メーカーが業務用販売をしていた殺菌処理済みの水出し紅茶を採用するに至る事は、ロンドンティールームとしても必然の流れでもありました。

当店独自の殺菌済み水出し紅茶を開発・製造へ

そうして水出し紅茶の販売を続けていくうちに、「もっと、ロンドンティールームならではのこだわりを詰め込んだ味わいを出したい」というこだわりが強く沸き上がってきました。

殺菌済みのものを採用したことで「食の安全に準じたものを提供したい」というモットーは満たせていました。
それでも、お客様から水出し紅茶へのお喜びの声をお寄せいただく度に、紅茶専門店としてのプライドから「もっとおいしいものを作って喜ばせたい!」という想いが熱く込み上げてきていたのです。

既にある商品で満足するのではなく、ロンドンティールームのオリジナル商品だからこそ実現できるおいしさを追求するべく、開発に踏み切ることになりました。

当初は、バリエーションを充実させる案も出ていました。
しかし、「”ロンドンティールームならでは“とは? お客様の期待に応えられるのはどんな形か?」と議論を繰り返すうちに、「紅茶初心者から紅茶通まで、だれでもおいしく紅茶を楽しんでほしい」という想いに沿ったものを提供したい、という結論に至りました。

そこで、あえて種類をしぼる戦略にしたのです。

幅広い層に楽しんでもらえるよう、アイスティーとしてスタンダードな味わいである「ストレート」「アールグレイ」の2つに狙いを定めて開発することにしました。
その分、オリジナル開発だからこそ実現できるおいしさをこだわり尽くすことで、ロンドンティールームらしい商品ができるのではないかと考えたのです。

しかし、完成するまでには数々の紆余曲折がありました。
水出し紅茶の開発には越えなければならない2つの大きな関門が立ちはだかっていたのです。

商品完成への第1関門:味わいの追求

まず、「水出し紅茶としてのおいしさの追求」は非常に難しい1つ目の関門でした。

ロンドンティールームが追い求めていた味わいは、「どなたでもゴクゴク飲める水出し紅茶」
シンプルな目標を達成するのは、まさに“言うは易く行うは難し”でした。

当然の話ではありますが、お湯と水では水温が異なります。
水の温度では、紅茶の渋み成分「タンニン」がほとんど抽出されないので、渋くなりづらいのが長所といえます。

一方で、水出し紅茶は紅茶の味わい自体が薄くなってしまいやすいのが難点です。
だからといって茶葉の量を多くすれば良いというわけでもなく、「ゴクゴク飲める味わい」のベストバランスの見極めは非常に難航しました。

茶葉の内容量、淹れる水温の違い、おいしい飲み頃になるまでの抽出時間、そしてティーバッグの形状に至るまで、来る日も来る日も試作と試飲の日々。

「どの茶葉を何グラム入れるか」という結論を出すまでに、膨大な時間を費やしました。

商品完成への第2関門:殺菌処理加工の委託

さらに、2つ目の関門として商品の完成の難易度を上げていたのが「水出し紅茶の殺菌処理加工を委託する工程」でした。

いざ加工を依頼という段階で大きな課題となっていたのが、下記の2つです。

  • 風味を維持したままの殺菌
  • 加工依頼に必要なロット数

最も避けたかったのが、殺菌処理加工をすることで追い求めていた味わいを損なってしまう状況でした。
そのためには、実績のある工場を探すことは必要不可欠だったのです。

さらに、大きくのしかかったのが、加工を依頼する上での指定発注数量の多さでした。

殺菌処理設備の関係上、委託先が指定してきた最小受注生産数(=最小ロット数)が35,000個という膨大な数だったのです。
金額面での負担が大きいのはもちろん、保管場所や様々な販売計画や方法を一から見直す必要もありました。

取引のある商社に紹介してもらってから、実際に加工の依頼で話を進めるまでにはだいぶ時間もかかりました。

ロンドンティールームオリジナル 殺菌済み水出し紅茶の完成

スリランカ系・インド系・アフリカ系など茶葉の産地や種類も変えつつ、茶葉の入れる量や抽出時間の調整など、サンプルを作っては試すという日々が続きました。

研究を重ねる上でもっとも大事に取り入れていたのが、スタッフたちの忖度ない意見です。
長年の経験から、お客様により近い立場であるスタッフたちが「おいしい」と感じるものが、お客様の「おいしい」にさらに近づけるものである、と感じていたからです

スタッフの意見をもとにメーカーとの協議も重ね、味にも妥協することなく研究した結果、だれでも簡単においしく作れて飲める水出し紅茶ができあがりました。

それが、今販売しているオリジナル水出し紅茶です。
開発時のブログはこちらからもご覧いただけます。

どなたでもゴクゴク飲める!ロンドンティールームオリジナルの水出し紅茶

紅茶の製造工程とロンドンティールームの水出し紅茶の殺菌条件

ロンドンティールームの水出し紅茶は、下記のような工程で製造を行っています。

  1. 原産国での製茶・ブレンド
  2. 輸入
  3. 日本で異物除去・検査
  4. 当店委託先での殺菌処理

※日本国内でブレンドを行っている種類もあります。

ここで、紅茶の製造工程を改めて振り返ると共に、ロンドンティールームの殺菌済み水出し紅茶ができるまでの工程をご紹介します。

紅茶の製造工程(茶葉原産国 スリランカ・インドなど)

まずは、紅茶の製造工程から。
この手順はいわゆる「オーソドックス製法」と呼ばれるものです。

くわしい製造工程の手順はこちらのブログ記事からもご覧いただけます

ロンドンティールームのオリジナル紅茶ができるまで(紅茶の製造工程)~現地ブレンド篇~

「オーソドックス製法」は紅茶の作り方の中でも伝統的製法です。
ほかにも、「セミ・オーソドックス製法」「アン・オーソドックス製法(CTC製法)」とよばれる製法があり、産地や茶園、茶工場によって使い分けをされています。

日本国内での紅茶の検査

茶葉の原産国から商社や紅茶メーカーを通して、日本へ輸入します。

ロンドンティールームでは、輸入された茶葉を日本国内のブレンドメーカーで異物などを除去する工程を委託しています。

その工程手順の一部はこちらのブログ記事でもご覧いただけます。

ロンドンティールームのオリジナル紅茶ができるまで(紅茶の製造工程)~国内パッカーによるブレンド篇~

殺菌加工(ロンドンティールームの場合)

記事の冒頭で、「殺菌」の工程を踏んでいるのはロンドンティールームのモットーに基づいた商品を提供したいため、とお伝えいたしました。

さて、ここからはどのように殺菌工程を踏んでいるのか、工程と条件に付いてご説明いたします。
ブレンドを行った茶葉を、静岡の委託工場で殺菌加工を行います。
この委託工場は、食品安全マネジメントシステムに関する国際規格である「ISO22000」よりも、更に高度なベンチマーク承認規格である「FSSC22000」の認証を受けています。

ロンドンティールームが依頼している殺菌の条件は下記の通りです。

条件 内容
温度 128℃
圧力 0.15MPaG(ゲージ圧)
その他 飽和蒸気圧・10秒の殺菌

「乾燥」の工程で高温の熱風を当てますが、「殺菌」を目的とするには温度がまだ十分足りていません。

熱を加えて殺菌する方法には、高温の乾燥した空気をつかう「乾熱方式」と、水蒸気をつかう「湿熱方式」の2種類あります。
ロンドンティールームが取り入れている「気流式殺菌」方式は、「乾熱方式」と「湿熱方式」両方のメリットを併せ持った殺菌方法です。
熱風や通常の蒸気よりも熱エネルギーの大きい100℃以上の「飽和水蒸気」をあてることで、紅茶本来の風味を損なうことなく、短時間で葉の内側までしっかりと効率的に殺菌を行うことができます。

殺菌の処理が完了したら、念には念をかけて仕上げに金属探知機をかけ、最終的に検査を行ったあとにティーバッグへ茶葉を充填していきます。
ティーバッグの加工も、国際的な食品安全マネジメントシステムの認証規格の一つであるSQF認証を取得した工場に委託しています。

充填が終わり検品を行ったら、ようやくロンドンティールームの水出し紅茶ができあがりです。

安心して飲んでもらえるおいしい水出し紅茶を提供したい

ロンドンティールームが水出し紅茶を殺菌加工をしている理由は、ただひとつです。

「おいしくて、誰でも安心して飲める紅茶を提供したい」

正直にいえば、「やりすぎじゃないか」と言われることもあります。
しかし、殺菌加工の工程は、ロンドンティールームが販売する責任として必要不可欠であると考えたからである、ということを改めてお伝えします。

開業から40年の間に当店を信頼し支えて続けてくださるお客様にお応えするためにも、コストをかけてでも万に一つの危険を取り除く姿勢はこれからも徹底していく考えです。

また、「自分の店舗でロンドンティールームの紅茶を扱いたい」とお申し出いただく店主様も多くいらっしゃる中で、第三者認証機関による食品安全規格や品質管理などの証明書をお見せする事は、安心に繋がるのではないかと感じています。
ロンドンティールームとしても、直接商品をお届けした店舗様だけではなく、その先にいるお客様の存在も思うと「販売者の責任として”やりすぎ”というものはない」と考えています。

日々の生活において「完全無菌」状態で過ごすことは現実的に不可能ですし、酸化防止剤や保存料も入っていません。
だからこそ、水出し紅茶は作ったあとの飲み方や保管方法も非常に重要です。

ロンドンティールームでは水出し紅茶をご購入くださった方へレシピをお付けしておりますので、そちらもご参考にしながらお楽しみいただければと考えています。

【レシピ】ロンドンティールームの殺菌済みオリジナル水出し紅茶

ロンドンティールームでは、「誰でも安心して飲める紅茶」の提供だけではなく、ロンドンティールームならではの紅茶のノウハウを活かした「よりおいしい紅茶」の提供のために、日々研究を重ねています。

「ロンドンティールーム」といえば「おいしいミルクティーの店」
ありがたいことにそのようにイメージしてくださってる方も多く、夏が近づくにつれてカンタンに作れるおいしいアイスミルクティーのレシピについてお問い合わせいただくことが増えてきました。

そのようなご要望を受け、水出し紅茶を使ったアイスミルクティーのアレンジレシピを考案することとなりました。
誰でもカンタンに作ることができて、茶葉の味がしっかり感じられるミルクに負けないアイスミルクティーのレシピをお届けするべく、現在鋭意準備中です。

レシピが完成したら改めて公開しますので、ぜひ、楽しみにお待ちいただければ幸いです。

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